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不動産相談コーナー

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売買事例 1208-B-0156
相続人の所在が不明の相続物件の売買と解除条件の存否

 相続物件の売買の媒介にあたり、相続人のうちの1名の所在が判らず、委任状がとれないまま、長男を代表者として売買契約を締結した。
 ところが、決済・引渡し期日までその相続人の所在が判らなかったため、買主への所有権移転登記ができなくなってしまった。買主は売主の「契約違反」だと主張し、売主はこの契約は「解除条件付契約」で、決済・引渡し日に解除条件が成就したので契約は白紙に戻ったと主張している。どちらの主張が正しいか。このような場合、媒介業者としてはどのように対応したらよいか。

事実関係

 当社はある相続物件の売買の媒介をすることになったが、相続人5名のうちの1名が北海道にいるということで、その所在が判らないためすぐには委任状がとれないので、とりあえず長男が代表者として売買契約を締結することになった。そして売買契約が締結されたが、その後も北海道にいる相続人の所在が判らず、相続登記ができないために、買主への所有権移転登記ができなくなってしまった。
 なお、この売買契約においては、相続人の代表として契約した長男は、本人以外の持分は代理人として契約したので、その結果として北海道にいる相続人の持分については無権代理ということになっているが(民法第113条)、そのことは買主も承知しているので、万一本人の追認が得られなかったりした場合の対応については、特に定めていない。

質問

  •  買主は、「この契約は長男が代表として契約したのだから、決済・引渡し期日までに所有権移転登記の申請ができない以上、契約違反になり、違約金を支払ってもらわなければならない」と言っているが、この主張は正しいか。
  •  売主(長男)は、「この契約は、決済・引渡し期日までに北海道にいる相続人の所在が判明せず、相続登記が未了に終った場合には所有権の移転登記ができないことを買主も確認しているので、決済・引渡し日をもって解除条件が成就し、契約は白紙に戻った。よって、手付金を返還する」と主張しているが、この主張は正しいか。
  •  このような場合、媒介業者としてはどのように対応したらよいか。

回答

1.   結 論
   質問1.質問2.について ― 売主の主張にはかなり無理があるようにも思えるが、いずれの主張が正しいかは、上記【事実関係】からだけでは判断できない。
   質問3.について ― できれば契約を一旦白紙に戻し、北海道にいる相続人の所在が判明してから再度売買契約を締結するということが適当であろうが、その場合においても、買主にとっては期限の問題があろうから、期限までに相続人の所在が判明しなかった場合の解決策なども含めて、最初から弁護士等の法律の専門家に委ねるのが適当であろう。しかしその場合においても、このようなトラブルになった原因が貴社にあるということを肝に銘じて、今後の対応にあたる必要があろう。
2.   理 由
  について
 買主が主張する売主の「契約違反」ということについては、外形上はそのとおりであるから、買主の主張は正しいように見える。
 しかし、この契約は、当初から売主側においては、相続人のうちの1名の所在が不明なため、その相続人の持分の売買が無権代理になるということや、最悪の場合には相続登記ができないために買主への所有権移転登記ができないということがわかっていたので、そのことを貴社から買主に伝え、当事者が話し合いのうえ、とりあえず長男を代表者として契約を締結し、決済・引渡しの期日までに北海道にいる相続人を探し出し、売却委任状の取り付けと相続登記を完了させることだったとすれば、本件の売買が、売主の主張している「解除条件付売買」だった可能性を全く否定することはできない。つまり、当事者間に、北海道にいる相続人を決済・引渡しまでに探し出せず、相続登記が未了に終った場合には契約を白紙に戻すという「暗黙の了解」があったとすれば、売主の主張も一理あるということになるからである。
  について
 売主の主張が認められるためには、媒介業者(貴社)の行動や証言が重要な意味をもつので、そのあたりのことも考慮し、最初から弁護士等の法律の専門家に解決を委ねるのが適当である。しかしその場合においても、本件のトラブルの原因が貴社(媒介業者)の見切り発車にあったわけであるから、今後の費用面などで、それなりの対応をする必要があろう。

参照条文

民法第113条(無権代理)
   代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
   追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
民法第127条(条件が成就した場合の効果)
   停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
   解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
   (略)

監修者のコメント

 本件は、売主が売買契約の締結に当たって、「所在不明の相続人がいるので、買主への所有権移転登記ができない可能性がある」と言っていたか、それとも「所在不明の相続人がいるが、探し出して相続登記ができる」と言っていたかにより、結論が異なる。前者の場合は、意思解釈上「解除条件付契約」とみる余地が十分にあるが、後者の場合は、売主の債務不履行を構成する可能性が高い。結局は、契約締結当時の諸般の事実からみて黙示の事情を含め契約の解釈により、両当事者の主張の正当性を判断しなければならない。
 しかし、根本的には相続人1名の所在が不明という事情を聞かされながら媒介業者が、そのことに関して何ら取り決めをせず、契約を締結させたことが問題である。すなわち、移転登記ができない可能性もあることをプロとして何ら気にせず、漫然と通常の契約と同じように成約させたこと自体、買主に責任追及されても仕方がないと考える。売主が主張しているようにこれを明確に「解除条件付契約」としておけば、この紛争は起きなかったといえる。

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